2013年9月26日のゼミ日誌(第1期)

今回の日誌当番は井上さんです。

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日誌(2013/9/26)

後期のテキストはカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』Never Let Me Goです。

講義では、先ず一人称の語りについて、語り手を信頼できるか、できないかがポイントとなることを学びました。これまでに取り組んだ一人称の小説『大いなる遺産』、『ディヴィッド・コパフィールド』と『ジェイン・エア』の特徴や、それらとの比較について考えました。また、クローンやバイオテクノロジーの歴史についての説明がありました。

Chapter1に入り、この作品を読んでいてわかりにくのはなぜか、どこがおかしいと思ったかを指摘しながら読んでいきました。先ず、3ページの3行目。
… they want me to go on for another eight months, …
このwant〜to・・・のwantはきつい言い方で、押しつけがましい感じを与える。とすると、theyは一体誰なのかという疑問になります。私がおかしいと思った個所は、授業の中でも言いましたが3ページの7行目です。
There are some really good carers who’ve been told to stop after just two or three years.
よい介護人なら止める必要はないのではないかと思ったわけです。先生からtellは命令調であること、またtellとaskの違いについても解説がありました。ここでも誰が命令したのかが問題になります。ひっかかった所を注意深く読みとることで、ミステリー仕立てのこの作品の謎にせまっていくことができるのではないでしょうか。

今後作品を読む上で注目する点について、語り手のKathyは「どの時点から語っているのか」、「なぜ語っているのか」、「どうしてこんなに落ち着いて語っているのか」ということ。次に“へールシャム”という特殊な世界が、その中にいる人たちと外にいる人とでは捉え方がどう違うのか、という2点があげられました。

<感想>
Never Let Me Goは、静かな語りによって綴られますが、それとは対照的に内容は衝撃的です。はじめて読んだときはあまりのショックに唖然としました。
tellとaskの違いについて今まで気にもとめていませんでしたが、授業での説明のあと辞書で確認してみるとtell は(order)、askは(request)となっておりニュアンスの違いがはっきりわかりました。
Never Let Me Goは、前期に習ったA Room with a View と比べると英文そのものはわかりやすいかなと感じました。カズオ・イシグロはクリアで美しい文章を書くので定評があると聞いたことがあります。英語の文章を書くときはお手本にしたいと思います。

=====ここまで=====

キャシーの静かな語りの端々に「ひっかり」を感じつつ読み進むうちに、その真相が見えてくる、そんなNever Let Me Goを読み直すたびに、私はいろいろな意味でうならされています。私としてはThe Remains of the Daysよりもこっちの方が素晴らしいかな、と。

ついに後期が始まりましたね。4回生のみなさんは卒業研究も仕上げなければならないし…でたいへんだと思いますが、充実したいい時間を過ごしましょう。