2016年12月21日前半のゼミ日誌

今回の日誌当番は井元さんです。

===ここから===

今回のゼミ前半は、第19章から第23章まで読んでいきました。

キャシーとルースは、トミーのいるキングスフィールドの回復センターに行き、トミーと再会します。それから3人は車で船を見に行きます。この帰り、ルースはキャシーに性衝動のことでいつも嘘をついていたこと、キャシーとトミーの仲を引き裂いたことを謝ります。そして提供の猶予を証明して欲しいと告げ、マダムの住所を書いた紙を渡し、ルースは使命を終えました。それからキャシーはトミーの介護人になり、2人はトミーの書いた動物の絵を持ってマダムのところを訪問します。だがそこでは、実際に猶予はないこと、作品をもっていったのはクローンにも心があるのかを証明するためだったことを告げられます。帰り道、癇癪を起こすトミーをキャシーが抱きかかえます。それからトミーはキャシーとの間に距離を置くようになり、さらに介護人を変えるつもりだということも告げます。キャシーの介護生活も終わりに近づき、トミーが使命を終えたことを聞きキャシーは2週間後ノーフォークにドライブし、ごみが絡みつく有刺鉄線に囲まれた大地を前に涙を流し、空想に身を任せていた。

これでこの小説はおわりました

わたしが印象的だったところはトミーが癇癪を起すところです。
’It might be just some trend that came and went,’ I said. ‘But for us, it’s our life.’
という、マダムの家でのキャシーの言葉での癇癪と対照的な
Tommy’s figure, raging, shouting, flinging his fists and kicking out.
という、トミーの言葉では表さない唯一の反抗から、2人の性格が表れており、とても印象的でした。

最後に、題名である「わたしを離さないで」の意味について意見を出し合いました。様々な意見がでましたが、私の思うこの意味は、彼らはクローンだから普通の人間のように就きたい仕事に就けず、ただ憧れをもつことしかできなかったり、マダムに不気味な目で見られたりしたように、いろんな場面においてやはりクローンとして社会には馴染めないでいます。このようなことから、“わたしを社会から見放さないで”ということなのではないかと思いました。

この小説を読んでみて、水での表現が多く、生命の源である海の部類に入ることのできない悲しみを描いていたり、有刺鉄線を自分の人生に例えて、最後はその柵を越えられずにいたり、なんとなく自然やものとの関わりが多くあらわされているように感じました。思っていたより難しく考えさせられる小説でしたが、自分の考えとは全く違った方向からみた周りの意見も聞くことができて、なるほどと思うことが多くあり、面白かったです。

===ここまで===

普通の人間とは何なのか、人生とは何なのか、記憶とは何なのか、いろいろと考えさせられます。トミーのは(癇癪を起しても事態は変わらないわけですが)、ただ受け容れるのではなく、怒りを身体を使って表現することに、人間らしさが感じられて、印象深いですね。