2012年度前期ゼミ活動覚書その1

2012年度前期のゼミのメイン・テーマはオースティンの『高慢と偏見』でしたが、作品そのもの、社会背景、オースティンという作家について興味を持ったことについて、一人もしくはグループ(二人か三人)で発表していただき、ゼミメンバーからコメントや質問を受けた上でレポートにまとめてもらいました。以下、テーマごとの概要。順不同。


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1)ジェーン・オースティンに対する評価についての分析


…称賛しているものとして、サマセット・モーム夏目漱石吉田健一、批判しているものとして、シャーロット・ブロンテ、シャーロットとジェインを比較しているものとして、G・K・チェスタートンの見解を紹介して分析。ロマン主義という観点からオースティンがどのように考察されているかについても触れたもの。


2)松山大学図書館と矢次研究室におけるオースティン関連文献目録制作


…タイトルにオースティンやその作品名が含まれる書籍や論文はもちろん、それらが含まれていなくてもオースティンについて研究する場合に参考になりそうな文献をピックアップしてまとめたもの。近々、矢次研究室HP上にアップする予定。


3)高慢と偏見』にみる階級社会のステータス・シンボルについて


…ベネット氏やルーカス氏などの年収、財産、仕事、親、地位、権利、屋敷/家、どのような召使が雇われているかについてのリストを制作し、彼らの階級的な上下関係がどのような要因で決定されているか、どのような要因で女性の階級が決定するか、召使が階級社会の中で果たす役割について分析したもの。


4)高慢と偏見』で描かれる階級


…「近世イギリスの社会構造」を示すピラミッド図を示しながら、公爵を頂点とする貴族の序列やオースティン作品にしばしば登場するエクスワイアの社会的地位について説明した上で、『高慢と偏見』に登場する人物の階級について分析したもの。イギリスの階級に関する議論でしばしば登場する「ジェントルマン」が指すものについても言及。


5)18〜19世紀イギリスのファッションとオースティンのファッション観について


ロココ・スタイル以降のファッションの変遷を、モードの中心であったフランス宮廷からの影響も含めて分析。オースティンのファション観については『ノーサンガー・アベイ』のヒロインのセリフや書簡から分析。ゼミメンバーからの質問を受けて、男性下着師や服飾にかかる費用、庶民の服装についても言及。


「覚書その2」に続く