2013年6月27日のゼミ日誌(第1期)

今回の日誌当番は豊田さんです。


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今回は、*A room with a view *の113ページから115ページまでを読みました。


ルーシーが、以前話をした事がある男性の名前はハリスではなくエマースンだとセシルに告げる場面である九章の最後と、ハニーチャーチ家がウィンディーコーナーに住み始めたきっかけやサマー・ストリートが開発されてきた様子、イギリスの社会について、イタリアがルーシーとセシルにそれぞれ与えた影響についての部分です。


九章の最後に書かれている、”ふたりがこれまで交わした会話の中で、これが一番親密なものであることを、セシルは知らなかった。”という部分についての意見を出し合いました。
・ルーシーの秘密であるジョージとのキスについて、間接的にではあるが触れた
・芸術作品であるルーシーの考え方を変えたエマースンさんの話題であったから
・セシルがルーシーに初めて見せた格好悪い部分(キスの場面)の後の会話だから
・次の章へと続けていくという、E・M・フォースターの意図があった


という意見が出ました。


十章のイギリス社会についての描写では、中産階級より上の人たちは自分たちのコミュニティだけで人生を終えていく事、しかし今、ロンドンの霧が今にもそこへ流れ込もうとしているということ(これは、ルーシーたちの社会にエマースン父子が入ってくるという事でもある)が書かれています。
一方イタリアについて説明している部分では、イタリアでは平等の中で自分自身をあたためる事ができると書かれています。
イタリアがルーシーに与えたのは、好きになれない人はいない、社会的な柵を動かすのは難しいが、飛び越えることができるという寛容さでしたが、一方セシルに与えたのは狭量さだった。その結果、ルーシーは階級を超えた個人的な交流だけが自分にとって満足だという段階に進み、セシルは、彼が広いと思っている社会を、彼が小さいと思っている社会(ルーシーが住んでいる社会)と置き換えて、ルーシーを今いる社会から引き上げて救いだそうと考えるようになりました。


”ルーシーは自分の周囲の環境を、実のこもった振るまいを幾度となく繰りかえすことによって浄めていて、結局それを心休まる場所に変えていた。しかも彼女の眼は周囲の社会の傷を見るが、精神はそれを完全に軽蔑することを拒んだ。”
この部分を読んで、ルーシーの行動はハニーチャーチ家がウィンディー・コーナーに住み始めたころのルーシーの母親の行動と似ていると思いました。えらそうにせず、また卑屈になることもなく周りの人々と付き合う事を大事にするのは、ルーシーがイタリアへ行ったことにより身に着いたことでもあったのでしょうが、自分自身の親の振る舞いを見て身につけてきたことでもあったのかなと思いました。


<感想>
ルーシーもセシルも同じようにイタリアへ行き影響を受けて帰ったきたにも関わらず、これほどまでに反対の考えを持つようになるのは不思議だなと思いました。もともとの階級の差があったからという事もあると思いますが、やはりエマースン父子との関わり合いというのが大きかったのだろうと思いました。これはどこの国に行っても同じで、その土地の雰囲気というのも大事ですが、一番はその土地でどんな人と出会いどんな経験をしたかということだと思います。


=====ここまで=====


ルーシーがイタリアで変化した中で、エマソン親子との関わりが大きいとすれば、イタリアは彼女にとって触媒みたいなものなのかもしれませんね。エマソン親子のような人物と出会うことによって変わる可能性を彼女はもともと秘めていて、イタリアがそれを助長したというような。セシルはイタリアから影響を受けたのでしょうか。これについては考えてみた方がいいような気がします。