10月31日のゼミ日誌(第2期)

今回の日誌当番は浪本さんです。

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今回の授業はアグネス、ウィックフィールド氏とユライアの関係、スティアフォースとミス・ダートルの関係を中心に読み進めていきました。

アグネスはまだ子供なのに穏やかで静けさを持っていると描写されています。そしていくつもの鍵が入ったバスケットを持っているという事から家事に有能であることがわかります。アグネスは理想的な主婦像、そして男性を道徳的に導くという当時の女性の理想像として描かれています。a stained glass window in a church という表現はアグネスのずっと変わらぬイメージとして描かれています。良い子すぎて面白くない、という意見も多いアグネスですが、とにかく良い子でなければならない理由が彼女にはあります。それは父親の存在です。夕食の後アグネスは父のためにワインを用意します。もしそれが他の誰かによっておかれたなら、ワインが持っているいつものフレーバーを失ってしまうだろうと感じてしまうほどに、アグネスは父ウィックフィールドにとって、なくてはならない存在になっていると言えます。その中でもsometimes his eyes rested on her, and he fell into a brooding state, and was silent. とアグネスをじっと見ては亡くなった奥さんとアグネスとを重ね合わせ、物思いにふけり静かになってしまいます。アグネスはこれにすぐ気が付き、父の気持ちをこちらへ戻し、ウィックフィールド氏は酒を飲み、現実逃避をします。そんな父を見てやりきれない気持ちになる、一方では私が母の代わりをしなきゃと強く思います。ウィックフィールド氏も押し付けているわけではないのですが、そこにはやはり彼の弱さがあらわれています。そんな弱さに気が付いているもう一人の人物がユライアです。25章では、弁護士であるウィックフィールド氏と共同経営をしようと企てていくことがわかります。自分のことをしがない身の上と言うけれども本心からは思っていなく、どんどん弱みにつけ込んでいき、自分なしではやっていけないという所までウィックフィールド氏を追い込みます。更にはアグネスと結婚までもしようと考えています。そんなアグネスはデイヴィッドに自分は娘どころか天敵のような気がしてならない、と言います。自分にかかりっきりで交友関係や職務を狭めさせてしまった、その結果ユライアが必要になってしまったと責任を感じています。そこで父のためならば犠牲になるのは止むを得ないと考えています。

続いてスティアフォースとミス・ダートルの関係についてです。ミス・ダートルは美人ですが唇に傷痕があり、ディケンズは事細かく痛みや怖さを描写しています。当時は肉体的な感じを表現しないのが普通ですがこのように描写することでミス・ダートルの色っぽさを醸し出しています。と同時にデイヴィッドの性のめざめも感じさせています。この唇の傷跡はスティアフォースがつけたもので「ほんの子供だった時分、あの女についカッとなって思わずハンマーを投げちまってさ」とスティアフォースは言っています。そこで綺麗な女性に向かってハンマーを投げるのか、という疑問が浮かんできます。スティアフォースが残虐な子供か、それとも、二人は肉体的な関係だったのか、ということを感じさせています。このことにはっきりとは気づいていないデイヴィッドに対し、スティアフォースは野に咲くデイジーとからかうことから後者の意見が強いと思われます。

今回の授業は重要な事が多く、今後の展開が気になる人物ばかりだったと思います。
デイヴィッドがアグネスに「君は僕の天使だ」と素直に言ったり、そしてアグネスも父のことを心配してデイヴィッドの前で泣いてしまったりすることから、お互いが頼っているのだなと感じました。

=====ここまで=====

デイヴィッドが成長して、物語が佳境に入ってきました。それにしても、デイヴィッド、無邪気ですよね。いや、無邪気なふりをしている? アグネスは授業で言った通り人気のないキャラなのですが、考えてみると気の毒ですよね。お父さんはあんなふうだし、デイヴィッドは鈍感だし。もうすぐドーラが登場するし。