10月31日のゼミ日誌(第1期)

今回の日誌当番は豊田さんです。

=====ここから=====

今回のゼミでは、Never Let Me Goの第13章から第15章について取り上げました。

13〜15章では、ノーフォークへの遠出の様子が描かれています。

遠出の目的は、クリシーとロドニーが見たというルースのポシブル探しでしたが、先輩たちがルースのポシブルを見つけたという情報が本当の事かどうかもわからないままポシブル探しは続きます。一行は、ガラス越しに、偶然にもルースの描いていた理想像そのものの風景の中にそれらしき人物を見つけ、遠出はすべてがうまくいったかのように思えましたが、その人物の後を追いかけたことにより、その人物は実際にはルースとは似ていない人物であるという事に気が付いてしまいます。

この場面では、ルースの理想というガラス越しに見ていた世界と、それを追いかけた末に実際に目にしたものが全く違っていたという事が印象に残りました。また、ガラス越しに見ていたものが本当は自分たちの勘違いなのではないかと頭の中では気付いていながらも、でも勘違いでも構わないから自分たちの中に希望がほしくて、本当のことを確かめたくないという気持ちが、ルース以外のメンバーがその場を盛り上げるような発言をしている事や、'But even if we don't get to see her again, we're all agreed she's possible. And it's a lovely office. It reallyis.'というクリシーの言葉に表れていると思いました。また、いつもはテレビのまねをしたり、なんでも知っているようなふりをして先輩に合わせているルースが、今回の自分のポシブル探しの件では無言でじっとしていたり感情的になってまくしたてたりして、周りに対して自分を取りつくろう余裕が無くなっていることから、自分のポシブルを探すという事に対してどれだけ期待をしていたかや、真剣になっていたかがわかると思いました。'We are all know it, so why don't we all face it.'というルースの言葉は、期待していた自分への戒めだったのではないかと私は思いました。

感想
愛し合っている二人には数年の猶予が与えられるという噂が嘘であり、しかもこの時点でマダム達のプロジェクトが失敗への道をたどっているという物語の結末を知ってしまってからは、噂についてキャシーとトミーが一生懸命に考えていたり、トミーが絵を描いている場面を読むと、とても切ない気持ちになりました。
13〜15章を通して、”真実を知りたいのか知りたくないのか”、”知るのと知らないままではどちらが幸せなのか”、という問いかけが多くありました。この部分だけではなく、作品全体を通してその問いについて考えてみたいと思いました。

=====ここまで=====

みなさんはNever Let Me Goを既に一度読んでいて結末を知っているわけですから、「猶予」の件にキャシーやトミーたちが一生懸命になっている姿は切ないですね。彼女たちにマダムの住所を教えるルースも(←これは数章後のことですが)。

ルースの自分自身への戒めについて私が考えていませんでしたが、そう思って見直すと、ルースの新たな側面が見えてきそうな気がします。