11月7日のゼミ日誌(第1期)

今回の日誌当番は野村さんです。

=====ここから=====

今日のゼミは、Never Let Me Goの第16章から18章のp211までを取り上げました。

ノーフォークへの旅からコテージへと帰ってきたキャシーたちの間には「ノーフォーク現象」という、旅についての話をしづらい雰囲気がただよっていました。そんな中キャシーはトミーから架空の動物の絵を見せられます。後日、ルースと屋根裏部屋でいつものように話をしている時、そのトミーの絵が話題にあがってしまいます。ノーフォークでトミーに買ってもらったテープをルースに打ち明けていなかったことがキャシーにとって負い目になったのか、”so maybe I wasn’t being as careful as I might have been.” とあるように、いつもなら気をつけてトミーの話題があがらないようにしていたのに、今回はそれを許してしまいます。

この後の場面でキャシーとルース、トミーが3人で話すのですが、そこでルースはトミーの絵を自分もキャシーも笑いの種にしていたと告げます。それを知らされたトミーは当然ショックを受けます。一方でキャシーも”I was so floored by the fact that Ruth would come out with such a trick.”とあるように、ルースの裏切りに対して何も言えなくなります。

何故ルースはこのようなことをしたのでしょうか。それは自分よりもトミーと親密なキャシーに対して、ルースが常に嫉妬心を抱いているためなのではないかと思いました。

16章の“Tommy’s been telling me about his big theory. He says he’s already told you. Ages ago. But now, very kindly, he’s allowing me to share in it too.”というルースの台詞にはトミーとキャシーが2人だけで展覧会についての話を進めていたことに対する嫉妬が表れています。さらに17章でトミーと別れる可能性があるということをキャシーに話した時、ルースはたとえ自分と別れても、トミーはキャシーを付き合うことはないとわざわざ説明しています。まるでキャシーがトミーと付き合うのを阻止するかのような発言だと感じました。これらのことから考えると、屋根裏部屋でキャシーが思わずトミーの話題を許したことは”that was something controlled by Ruth in the light of her discovery”というキャシーの考え通りなのではないかと思いました。

17章の最後でキャシーはコテージを出て介護人の訓練を受けることを決意します。介護人となった後、同じコテージでともに過ごしたローラに7年ぶりに再会し、ルースの介護人になることを勧められます。ローラの言葉が後押しとなり、またヘールシャムの閉鎖という事実がキャシーの心に大きく響き介護人となることを決意します。”it definitely felt like Hailsham’s going away had shiftedeverything around us.”とあるようにキャシーにとってヘールシャムで過ごした記憶は重要であり、ヘールシャムの存在が生徒たちの繋がりとなっていると考えています。ルースにヘールシャムでの思い出をまるで忘れたかのような態度をとられた際、とても腹が立ったのはこういった想いもあったからではないかと思います。

<感想>
キャシーの語りによって物語が進むため、もしかしたら彼女の都合の悪いことは語られていないかもしれないし、全てが事実ではないかもしれません。それでもキャシーの立場になって読んでみるとルースの態度はとても許せるものではないと思います。彼女は16章でキャシーと屋根裏部屋で話した内容をトミーに伝えてキャシーを裏切りますが、11章の最後のシーンでも同じようなことをしています。2度も裏切るようなことをされて、どうしてキャシーはルースとの関係を切らなかったのか、とても不思議です。

「ヘールシャムの閉鎖と、それが意味すること――それは、時間切れ、ということ」(日本語訳p325)という場面を読んでクローンである彼女達の時間が限られていること、そしてその時間の中で出来ることもとても少ないということを考えると、生きた証のようなものを残そうとしているのではないか、そしてそれがキャシーが語る理由に繋がっているのかもしれないと思いました。

=====ここまで=====

キャシーの語りについては、12月にみなさんの意見を聞かせていただきたいと思っています。「生きた証」と語りの関連性、確かに感じられますね。この点について、また、他の点についてでも構いませんが、特にどの部分にそれが感じられるかなど、じっくり掘り下げてみましょう。