12月4日のゼミ日誌(第2期)

今回の日誌当番は篠木さんです。

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今回は大井さんと藤本さんの発表でした。

大井さん 【実在する女性とディケンズ

時系列に沿ってディケンズの周囲にいる女性を挙げ、彼女たちの存在がキャラクターに様々な影響を与え、作品にリアリティをもたせるのに一役買ったことが分かりました。
ディケンズは一目惚れしやすく、好きになってしまった女性に対して盲目的である一方、愛人がいた際には死後やっと明らかになるほどしっかりとアリバイ工作を行っていました。ディケンズは女性への想いと、作品のイメージを壊したくないという苦悩に挟まれており、彼にとって女性関係は、人生を通して思い通りにならないものであったと言えると思いました。
ホガース姉妹はディケンズに大きな影響を与えており、特に妻であるキャサリンとの関係を通して得た経験・考えは、ストロング夫妻のやりとりを通してD.C.によく表されていました。
ディケンズはキャサリン・メアリーのような家庭的な「炉端の天使」を理想的な女性として作中に描いていますが、彼が夢中になってしまうのは決まって美しい女性であり、理想とは違う女性を好きになってしまうところに、彼の非常に人間的な一面を見ることも出来ました。

藤本さん 【David Copperfieldとディケンズ

ディケンズとディヴィッドの人生を比較し、ディケンズの経験と結婚観が作品に色濃く反映されていることが分かりました。特に幼少期に靴墨工場で働かされた経験は彼の人生にトラウマとも言えるべき影響を与えていました。それが、D.C.ディケンズの自伝的小説であると評される一因となったことがわかり、ディケンズの「子どもは子ども扱いされるべきである」という考え方を読み取ることも出来ました。
心理学的描写とD.C.に登場する大人を絡めての考察では、クレアラに対してディヴィッドがエディプス・コンプレックスを抱いていることが、自分を虐待するマードストン姉弟への態度を通じて描写されていることが分かりました。デイヴィッドの母親的存在の一人であるベッツィが、作品冒頭で生まれてくる子どもと自身を重ね合わせている場面では、ディケンズが自分自身をデイヴィッドに投影していることが暗に表現されていました。

今回はデイヴィッド・コパフィールドよりも、ディケンズを中心とした内容となりました。藤本さんの発表内ではディケンズの自尊心の高さが明らかになり、発表が進むに連れて、結果としてゼミ内で彼の人間性への評価が下がって行っていますが、そんな彼の人間的な部分が作品に厚みを与えていることは明らかであり、歳月を経て文化や価値観の変化した現代でも、彼の作品が色褪せることなく人々を魅了し続けているということを非常に面白く感じます。ディケンズの関する発表が続く中で、これからどのような考察がされていくのか楽しみです。

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ディケンズは子供時代からのトラウマを抱える一方で、仕事にも恋愛にもエネルギッシュエネルギッシュだったということになるのでしょうね。こういう人と結婚するとたいへんだろうなと思いますが、話題が尽きない、興味深い人…というのは、誰もが認めるところでしょうね。