11月21日のゼミ日誌(第1期)

今回の日誌当番は森下さんです。

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今回の授業は、Never Let Me Goの第21章から第23章(最終章)まで取り上げました。

21章では、キャシーとトミーがマダムの家へ向かいます。マダムに会った二人は、マダムに展示館の噂について尋ねました。マダムが長年集めた絵画、詩やその他。キャシーたちはそれらを愛し合っているのが本当かどうかの判断の基準なのではないかと聞きました。マダムは「この話を続けますか」と誰かへ問いかけました。すると「続けましょう」と車椅子に乗ったエミリ先生が現れたのでした。

22章では、エミリ先生から真実を聞かされます。噂のこと、ヘールシャムのこと、何のための作品制作だったのか、なぜ教え、励まし、創らせ学ばせたのか…。エミリ先生は「モーニングデール・スキャンダル」について話しました。科学者によって能力を強化した子供を産むこと、望む親に提供すること。臓器提供用の子供を生み出された子供は仕方が無い。しかしその子供たちに社会を乗っ取られるのは困るということを。キャシーたち、特にトミーは話を信じられませんでした。キャシーは帰り際マダムに『わたしを離さないで』を聞いていたキャシーを見てなぜ泣いたのかも尋ねました。帰り道、裏道ばかり選んで走っていた車をトミーは止めて降り、闇の中に荒れ狂いました。キャシーはトミーを抱きしめ
落ち着いてから他愛のない話をしながら帰路につきました。

23章では、小さな変化が現れました。トミーがキャシーの前で絵を描きたがらなくなり、意識がセンターにいる提供者仲間の方へ向き始めました。「キャシーも提供者になればわかるさ」という発言もし、キャシーは怒りました。トミーの4度目の提供の通知が来て一週間後、トミーは介護人を替えると言いました。キャシーは最初抵抗しましたが最終的には承諾しました。介護人が替わるまでの最後の数週間は平穏に暮らしました。ルースの話、ヘールシャムでの話など話してなかったことを語り二人は別れました。
トミーが使命を終えた後キャシーはノーフォークへ車を走らせ空想をしました。そこにはトミーが手を振り呼びかけました。しかしキャシーはそれ以上進むことを禁じました。顔には涙が流れていたが自制し、車に戻り行くべき所へ向かって出発するところでこの物語は終わります。

【感想】
第21章で印象に残ったところはあまりありません。1つだけP384で「マダムが特別に私達への好意を感じさせる言動があるわけでもないのに〜誰よりも親しく、近しい人のように思えた。だから私は準備してきた事を捨て、素直に話始めた。」の部分を読んで、親の前の子どもみたいだなと思いました。
第22章は研究の話が印象に残りました。クローンを創るのは仕方ないが社会を乗っ取られるのは嫌だという人間のエゴの部分が出ているなと思いました。展示館の作品を見ることでクローンに「魂」があるのか証明するという行動は先生たちの安定剤にもなっていたのかなとも思いました。
最終章ではトミーはキャシーのことを思って行動したと思うが不器用だなと思いました。結果的に二人は泣くこともなく別れていたが、すごく覚悟のいることだし、使命を全うするというクローンの生き方をしたなと私は思いました。
最後にも「柵、有刺鉄線」がありました。最初に出ていた「柵」はキャシーたちを閉じ込めていたが、最後の「柵」はキャシーを守った印象がありました。

「わたしを離さないで」を読んで、色々考えさせられることがあったなと思いました。科学や医学、技術が進んでいる現代なので、作品の内容は現実ではありえないということでもない。いつか人類がいきつく問題だと思いました。カズオ・イシグロは子供の書き方が上手いなと思いました。何気ない小さな事の積み重ねで作品が出来上がっててとても読んでいて面白かったです。

=====ここまで=====

最初に読んだときは衝撃でしたが、落ち着いて読み直してみると、いろいろ考えさせられるだけではなく、うまいなあと感心させられる箇所が私としても多々ありました。みなさんのまとめのコメントが楽しみです。