5月15日のゼミ日誌(第2期)

今回の日誌当番は浪本さんです。

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今回の授業の担当は第8章が長坂さん、第9章が浪本です。

第8章では、キャシーがルーシー先生の奇妙な行動を見てどこか怒りや恥ずかしさを感じていること、トミーが情緒不安定になっていること、そして生徒たちの性教育について生徒側から教師側からの反応について綴られています。

ポイントの中でも特に注目されるのは、ルーシー先生の奇妙な行動についてです。ルーシー先生が紙を鉛筆で黒く塗りつぶしている姿をなぜキャシーは見たくなかったのか、But she didn't, and what I remember now is that I went down the staircase burning with shame and resentment.この英文にあるように、怒りや恥ずかしさをなぜ感じたのかについて様々な見解が挙げられました。
保護官はキャシーたちの先生であり、その一方で親のような存在。そして特にルーシー先生は生徒たちと距離が近く、自分に近いと感じている。そんな親の取り乱した姿は見たくない。そして先生だからこそ、しっかりしてほしいという思い。また、ルーシー先生をこんな状態にさせてしまったエミリ先生たちに向けての怒りではないか。奇妙な行動は自分たちに関係があると感じ取るキャシー。自分の側に無意識に落ち度がありshameを感じたのではないかといった見解です。

第9章はルースとトミーの仲違いによりキャシーが後釜ではないかという噂が浮上する中、キャシーはルースからもう一度よりを戻すよう説得を頼まれます。トミーを説得するどころかルーシー先生との重大なやりとりがあった事を聞いて後ろめたさを感じてしまいます。そしてルーシー先生がヘールシャムを去り、キャシーたちのヘールシャムでの生活も終わりを迎えるという内容です。

ここでもやはり注目されるのは、ルーシー先生が以前トミーに絵を描かなくても良いと言ったのは間違いだった、と言葉を撤回したという事だと思います。
また、いつも幼い素振りを見せているトミーだからこそ'I do realise that, Kath. That's exactly why I can't rush back into it with Ruth.という言葉には驚きました。誰よりも将来の事をしっかりと見据えているのはトミーなのかもしれないと思いました。

〈感想〉
私は3人の関係性についてとても興味があります。ルースはキャシーやトミーに対して酷い事をするなぁ…と思うけれども、少しいじらしさも感じてしまいます。ルースは二人が惹かれあっている事を心の底ではわかっているからです。そして皮肉にも邪魔をすればするほど二人の仲は深まっていくものだなと思いました。

ルーシー先生は、教師にも親にもなりきることができなかったためヘールシャムを去って行ったのではないかと感じました。個人的にはルーシー先生には思いや考えを貫いて欲しかったです。けれども将来に待ち受けている事を本当に理解してもらいたいと思う一方でそれを話す事は正しいかどうかわからなくなり、ヘールシャムを去ってしまったルーシー先生。やはりルーシー先生は一人の人間であるなと感じました。

私が保護官だったらどう指導するべきなのか…情操教育に力をいれるべきか否か。この事を考えるのは容易ではないけれども、クローンそして人工知能が話題となっている現在、向き合っていかなければならない問題だと思いました

=====ここまで=====

生徒から見ればああいう先生は困るかもしれませんが、彼女の気持ちも揺らいでいるのだろうなあと思うと切なくなります。ルースも、我儘なようでいて心の中は複雑だろうし、切ないですね。彼女の今後を考えるとますます切ない。キャシーとトミーもそうなのですが。