7月10日のゼミ日誌(第2期)

今回の日誌当番は大井さんです。

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今日は浪本さん、土居さんの発表でした。

まず、浪本さんは「Never Let Me Goにおける情操教育」をテーマに、Hailshamでの教育について紐解いてくれました。
そもそも「情操」とは、情緒や情動とは異なり、価値あるものに接した時に起こる感情のことを指します。
まさしくこれはHailshamでの芸術教育が当てはまるといえます。
情操を育てる教育は、人間が人間であることを確かめる教育です。
キャシーたちはクローンであるのに、人間であることを確かめる教育をされていたというのは不思議です。
しかし、この情操教育のお陰でキャシーたちは自己表現の方法を知り、自らの感情を芸術を通して表現します。
前回の私の発表で、NLMGはキャシーがオリジナルである自らの存在を残そうとした、と紹介しましたが、Hailshamの生徒たちは作品づくりを通してオリジナルな自分の感情を表現していたのだと思いました。
キャシーたちに人間的教育をするのはどうか、という指摘もありましたが、情操教育のお陰で自己表現の方法を得たHailshamの学生はある種幸せだったのかもしれません。

続いて土居さんは「クローン、科学技術について」というテーマでNLMGの作中でクローンや科学がどういった見方をされているのか紹介してくれました。

キャシーたちに対し、エミリー先生やマダムはキャシーたちを誕生させた科学技術の進歩に対する恐怖を訴えます。
私が土居さんの発表のなかで印象に残ったのは、クローンは自らの運命(=臓器提供のために生まれた存在であり、待つのは死であること)を受け入れているのに対し、人間はクローンの臓器を得てまで生命を延ばしている、という二つの対立する運命の受け入れ方の違いです。自ら人生を受け止めるか、抗うか。
改めてこの作品の切なさに気づかされました。

発表も折り返しになりました。
みんなの発表を聞くたびに、新しい角度からNLMGを見返すことができ、作品に込められたカズオ・イシグロの想いを考えることができます。

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どの小説にも言えることかもしれませんが、Never Let Me Goについて語ることは尽きないですね。しかも、キャシーたちの運命を考えると切ないですね。