1月8日のゼミ日誌(第2期)

今回の日誌当番は、菅野さん、土居さん、内藤さんで、まとめ役は菅野さんです。

===ここから===

菅野が矢野さん、土居さんが加藤さん、内藤さんが石浜さんの発表を担当しています。

矢野さんの卒業研究のテーマは、『エリザベス・ベネットとジェイン・エアの幸せプロセスの違いとは』でした。『高慢と偏見』と『ジェイン・エア』は、結婚で物語を終えるというハッピーエンドや、薄幸な女性が様々な困難を乗り越えた末に幸せな結婚を手に入れるというシンデレラストーリーが共通しているが、それまでの経緯や作者の結婚観に違いがあるという点に着目してこのテーマを選んだとおっしゃっていました。まず1章では、それぞれの作品の作者であるJ.オースティンとC.ブロンテの違いについて、主にリージェンシーとヴィクトリア朝時代、リアリズムとロマンティシズムというように対比を成しつつ述べられていました。次に2章では、それぞれの作品の主人公の生い立ちや、結婚に至るまでの経緯の違いについてまとめられていました。発表を聞いて、18・19世紀のイギリスがいかに大きく変化を遂げた時代であるかということを改めて認識しました。その影響を受けた対照的なふたつの作品にはそれぞれの魅力があり、それらを比較することによって、より面白さに深みが出るのだと思いました。

加藤さんのテーマは「『高慢と偏見』における結婚のあり方ー理想的な結婚とは」でした。
この作品に出てくる3組のカップルをそれぞれ比較し、作者の考える理想的な結婚とはどういうものかというものを結論では加藤さんなりにまとめられていました。また、それぞれの男女の性格や考え方、英文を紹介することでとても分かりやすかったです。また、1章の便宜的結婚での、“She seems perfectly happy, however, and in a prudential light, it is certainly a good match for her."というように、幸せの形は人それぞれであるということを知りました。また、結婚における幸せとは何かという議論が交わされ、結婚について深く考えることができ面白かったです。
でもやはり私はエリザベスとダーシーのような紆余曲折しながらも、最後は幸せになるというような恋愛結婚ができればいいなと思います。

私は石浜梨紗さんの「『虚栄の市』におけるヒロインの悪女性」についてまとめます。悪女を表すフランス語の「ファム・ファタール(Femme Fatale)」についての説明が興味深かったです。ベッキーとアミーリアを、ベッキーとジェインを比較していて、その対比が鮮やかなはので物語が更におもしろくなり、深みが増すのかなと思いました。

ベッキーかアミーリアのどちらが好きかと聞かれれば、私は間違いなくベッキー派です。彼女のどんな手を使っても成り上がろうとする姿勢や、たくましさは女性に共感されやすいのでは、と感じました。(『風と共に去りぬ』のスカーレットなど)レジュメに引用していたベッキーの成り上がろうとする決意の部分は私も気に入っています。Well, let us see if my wits cannot provide me with an honourable maintenance, and if some day or the cannot show Miss Amelia my real surperiority over her. Not that deslike poor Amelia who can deslike such a harmless, good-natured creature? Only it will be a fine day when I can take my place above her in the world. As why, indeed, should I not? Ruined! Fiddlededee! I will get you a good place before that, or Pitt and his little boy will die, and we will be Sir Rawbow my lady. While there is life, there is hope, my dear, and I intend to make a man of you yet.

逆に、「家庭の天使」であるアミーリアは現在ではあまり人気がでないように考えました。石浜さんの発表から思ったことですが、アミーリアは何となく『デイヴィット・コパフィールド』のアグネスに似た雰囲気を持つ女性だと思いました。発表後の話し合いでもあったように、サッカレーもアミーリアがあまり好きではないのでは、と私も思いました。アミーリアの魅力である優しさ、可憐さ、弱さをサッカレーは見下しているように描写しているのではないかと思いました。

ベッキーとジェインを比べるとジェインは個性が弱いように思いました。「ガヴァネス」として比較していたので、ジェインもアミーリアのように弱い女性のように感じてベッキーと比べてはジェインの魅力が伝わりにくいと思いました。
ベッキーは「家庭の天使」と言われた19世紀の理想の女性像を打ち砕いて、20世紀の新しい女性像に近づいている、という石浜さんの結論に納得できました。サッカレーの小説は読んだことがなかったので、これから読んでみたいです。

余談ですが、私は授業で「ファム・ファタール」の説明を初めて聞いた時は『三銃士』のミレディを思い浮かべました。『三銃士』がフランスの小説でミレディはイギリス人なので女性を悪く言う時に使われる言葉なのだと石浜さんの発表で分かりました。

卒業研究の発表は2回目で冬休みを挟んでいたということもあり、みなさんとても上手に内容がまとめられていました。また来週、再来週と発表が続きますが、みなさん違う作品について研究されているのでどんな内容が聞けるのかとても楽しみです。

===ここまで===

今回の発表はどれも、女性の生き方とか結婚に関するもので、時に自分のことを考えつつ、研究し甲斐があるのだなあと再認識しました。ファム・ファタールと言えば、『三銃士』のミレディもそうですね。卒業してからも、本や映画やお芝居などでファム・ファタールに出会うことがあると思います。結婚や女性の生き方について考えてしまうのは言わずもがなですね。