1月21日のゼミ日誌(第2期)

第2期、第3期の第2回合同ゼミの日誌、第2期生(4回生編)です。担当は、森下さんと矢野さんです。

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長坂さんのテーマは、「人間らしい異質なものたちー『フランケンシュタイン』、『すばらしい新世界』、『わたしを離さないで』ー」でした。三つのSF小説の登場人物を取り上げて親と子の関係、生き方・自己認識について考察し、普通でない登場人物たちがどうして人間らしく感じるのか、という結論につなげて発表してくれました。

どの作品も親という存在が曖昧であったり、登場人物が普通の人間と自分を比較することで自分が人間とは違う存在であると認識したりするという話の特徴がみられました。私は特に『すばらしい新世界』に興味を持ちました。文明世界では親子が存在せず、「母がいないことで何かを手にできず、母にならないことで何かを手にできない」という言葉が印象的でした。
科学技術によって生みだされた生命を感情豊かな人間らしいものとして描くことで、人間はどうあるべきなのか、人間らしさとは何なのかということを私たちに投げかけているのだと思いました。また、科学技術の進歩によって人間を生み出すことは良いことなのか、幸せなことなのか、考えさせられました。

藤本さんのテーマは『Never Let Me Goに隠された母性性』でした。母性性とは男女問わず備わっている母性的なもの、包み込むもの、安心、安らぎのことであり、中でも中核となるのは"包み込む"だそうです。その母性性を、NLMGにおけるキャシーの行動や、作中で多用されている水の表現、ヘールシャムの説明描写が子宮の構造と関連づいていること、作者イシグロの生い立ちとクローンたちの帰る場所の関係などから読み取り、隠された母性性によって、作品にどのような効果が生まれるのかについて考察しまとめられていました。発表でも言われていた、「母なる海」といった言葉があるように海=生命が生まれ帰っていく場所であり、水は生命を与えるすべての液体を指すなど、水と生命は深い深い関わりを持っているのだと、藤本さんの発表を聞いて強く感じました。また、NLMG作品内にこんなにも母性性を読み取ることが出来るのだと知り、キーワードを見つけると、作品のいろんな読み取り方が出来る面白さを改めて感じました。

浪本さんのテーマは『Never Let Me Goにおける情操教育』でした。一般的にクローンは非人間的であることが社会的前提にあり、彼らに教育や情操教育は必要ではないと考えられていることから、NLMGのキャシー達は教育を受けるべきだったのか、クローンに対し教育を行ったことは正しかったのかを考察しまとめられていました。第一章で情操や情操教育について定義の紹介があり、第二章では情操の定義の中でも美的情操にあたる絵を描くことについて、第三章では、ヘールシャムとクローンたちということで、ヘールシャムの教育やエミリ先生とルーシー先生の異なる教育観、ヘールシャム出身以外のクローン達とヘールシャムの生徒たちについて述べられていました。NLMGを読んだ際、絵を描くことが物語の大切な要素のひとつだと感じていたけれど、浪本さんの発表で子供たちにとって絵を描くことは人間として歩み出すことのはじまりで生きる喜びであり、感性を磨くだけでなく、生きる事について考える行いでもあると知り、思っていた以上に奥が深い行動なのだなぁと感じました。

今回の発表はどれも科学技術に関するテーマでしたが、三人の方それぞれ焦点を当てているところが違っていてとても興味深い内容でした。普段は特に考えることのなかった、私たち人間とは何なのかについて考えさせられました。

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人間とは何なのかという問題を、特に考えさせられる作品についての発表が行われました。『フランケンシュタイン』は卒業してからでも、ぜひ読んでいただきたいです。タイミングよく、次のような番組もあります。

http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/41_frankenstein/