5月21日のゼミ日誌(第3期)

今回の日誌当番は徳永さんです。

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今回の『不思議の国のアリス』の担当は本山さんと私、『秘密の花園』の担当は船井さんと今井さんでした。しかし『不思議の国のアリス』と『秘密の花園』に取り掛かる前に、前回休んでいた私と小西さんが卒業研究進捗状況報告②をしました。小西さんは『イギリスにおける階級の変化と言葉』をテーマにしていて、特に「ジェントルマン」に着目していました。言葉1つをとっても意味の変動や階級についての意識によって異なってくるので今後どのように考察されていくか楽しみです。私は『ダロウェイ夫人における疎外感と同性愛』について発表しました。ウルフが用いた意識の流れの技法はかなり読みにくいところはありますが、個性的で私は好きです。上流婦人であるクラリッサがどのように疎外感を感じどのように払拭していくか、という点と、当時のイギリス同性愛を背景として考えながら、今作中での同性愛を詳しく考察していこうと思います。また、今後の同性愛の在り方にも注目していきたいです。

その後通常通りの授業に戻り、『不思議の国のアリス』に取り掛かりました。特に印象に残ったところは第7章から、"the last time she saw them, they were trying to put the Dormouse into the teapot." (P67 L13) ヤマネをティーポットに押し込む行為は現実では恐ろしい出来事なのに関わらず、挿絵ではコミカルに描かれているところです。当時文章で書き足りないことを挿絵で描くという風習から、不思議の国はグロテスクな一面もありながらその事実を感じさせず、子供まで読みやすい作品に仕上げていると感じました。今作は全体を通して釤真っ当なのに真っ当でなく書かれている釤と釤真っ当でないのに真っ当であるかのように登場人物が振る舞っている釤など現実とかなり矛盾が生じた展開になっています。そこでうまく読み込むためには、授業中矢次先生が仰ったように、物事を場合分けして整理することが必要だと感じました。不思議の国では世間一般の常識が通用しない、そのような世界で生きていくためにアリスがどう成長していくか、という点に注目して学びたいと思います。

3限目は、『不思議の国のアリス』の続きを少し終えた後、『秘密の花園』に取り掛かりました。第20章から、"I shall get well!" he cried out. "Mary! Dickon! I shall get well! And I shall live forever and ever and ever!" (P183 下から3行目) 今までネガティブだったコリンの生きたいという気持ちが徐々に強まっていきます。これは、コリンにとっての人間関係において、対子供との関係が彼にもたらしたもの、対大人との関係が彼にもたらしたもの、自然から何を得て、どう影響をもたらしたのか、ということについて深く関わっていると思います。対子供の場合、やはり同世代ということもあり、ポジティブな影響を、対大人の場合、大人が勝手に作ったものさしによってネガティブな影響を受けていると感じました。大人から学ぶことは大半良いことかもしれませんが、悪影響も考えられるのだなと思います。授業の話の中で出てきたミシェル・フーコー著『狂気の歴史』を参考までに是非とも読んでみたいです。

次回は継続して『不思議の国のアリス』と『秘密の花園』を考察していきます。

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卒業研究の参考にはならないと思いますが、マガジンハウスの『ku:nel』最新号に、ヴァージニア・ウルフが過ごしたMonk's House(http://www.nationaltrust.org.uk/monks-house/)の記事が載っていました。なかなか素敵な場所のようです。