2016年12月10日補講②のゼミ日誌

今回の日誌当番は上岡さんです。

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12月10日に樋又キャンパスで行われたフェリス女学院大学教授の向井先生の特別講演会を拝聴しました。講演会の内容と感想について書きたいと思います。

向井先生はジェーンオースティンとブロンテ姉妹の作品を研究されているそうです。今回は「教区司祭さん舞踏会なんかに参加して大丈夫なんですか?」という題でお話ししていただきました。

疑問点として、作者のジェーンオースティンの父や兄は牧師であるのに作品の多くに出てくる牧師はあまりよく描かれていないということに焦点を当てました。理由として三点あげられ、一つ目はイングランド教会の成り立ち、二つ目は牧師の成り立ち、三つめはキリスト教の世俗化したことが原因だということでした。一つ目のイングランド国教会の成り立ちですが、これはヘンリー8世が離婚したいために行った改革で、教養に対しての改革ではなかったことが関係あるのではないのかというお話しでした。

二つ目はその当時の牧師の成り立ちです。当時の財産相続のルールとして限嗣相続というものがありました。これは相続を限定する法です。親族内で相続順位を決め、普通は長男などの摘嗣に相続されます。一家に男子がいない場合は血筋の近い男子が引き継ぎます。『高慢と偏見』でコリンズがベネット家の限嗣相続人になっているのもそのためです。そして、財産を相続できない次男以下は教区司祭や医師、弁護士といった専門職に就くことで「ジェントルマン」の社会的地位を保っていました。

三つ目はキリスト教の世俗化によるものです。信仰としてのキリスト教から啓蒙思想が広まった時代でした。これは教会中心から人間や社会を自分の頭で考えて物事を見ようという考えが広まったからだという考えでした。

高慢と偏見』の最終プレゼンで取り上げられたものもありましたが、より詳しく物語とオースティンについて理解することができました。今回の講演会を聞いて作品の発表をするときはイギリスの時代背景を調べて知っていれば知っているほど深い考察ができるのだと思いました。

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この講演会には、矢次ゼミの卒業生も来ていて、父親と兄が牧師だったのに、なぜオースティンは牧師をよく書かないのか(家族に好意的になるがあまりよく書きそうなものなのに)という疑問を抱いたようでした。軍人も含め、兄弟がオースティン小説に与えた影響を検討しても面白いかも、とも、その卒業生は思ったようです。オースティンは海軍の軍人は肯定的に描いていると向井先生がおっしゃっていましたが、他の作家の場合と比較するなどしても面白そうですね。