【第5期】2018年5月10日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、羽藤さんです。

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先週からカズオイシグロの『日の名残り』に入りました。
この作品は主人公の執事であるスティーブンスが過去を思い出していく物語です。

授業ではプロローグと第1章を考察していきました。
ティーブンスが主人にすすめられて旅に出ようとする場面です。
私が担当したところで特に気になったのが、主人に旅をすすめられてそれを断るところのスティーブンスの思いです。
a reply to the effect that those of our profession, although we did not see a great deal of the country in the sense of touring the countryside and visiting picturesque site, did actually 'see' more of England than most, placed as we were in houses where the greatest ladies and gentleman of the land gathered.
イギリスという美しい景色を見るのではないが、イギリスという国のありさまをお屋敷で働く中で日々目の当たりにしていると
ティーブンスは思っています。
私はこれを読んでこの言葉は職業意識だと感じました。執事という仕事は常にお屋敷にいて主人にお仕えしなくてはならない、そういう仕事としての言葉だと思います。スティーブンスの執事という仕事に対する姿勢はとても熱心だと思います。執事という仕事に誇りを持っています。
ティーブンスの仕事に対する熱意に注目していきたいです。
プロローグの後半ではミス・ケントンからの手紙でダーリントン卿の時代を懐かしく思い出します。同業者と話し合い考えを深めることができた時代、ミス・ケントンはどういう存在であったのか、これから彼女に会いに旅に出るので楽しみにしたいです。

屋敷の管理に不安を残しつつ旅に出たスティーブンスは労働者風の男に出会います。
その男にしつこく言われ、丘の上に登ることにしました。
I would say that it is the very lack of obvious drama or spectacle that sets the beauty of our land apart. What is partinent is the calmness of the beauty, of its own greatness, and feel no need to shout it.
丘の上から見た田園風景を見てスティーブンスは偉大だと感じました。
田園風景なんてとても素朴な景色です。
しかし、スティーブンスはどんな名所よりもなんてことない田園風景の方が美しいと感じました。
この胸打たれた景色は男にしつこく言われなければ見ることはなかっただろうし、素朴な景色を偉大だと感じることもなかったと思います。
ティーブンスにとって旅に出てとても重要な体験だと思います。
これからまだ旅は続きます。どんなものを見て聞いて感じていくのか、彼がどんなことを回想していくのかみていきたいです。

===ここまで===

過去の回想といっても、昨年の後期に読んだ『ジェイン・エア』とはずいぶん違いますね。スティーブンスの心理状態や、当時の状況について整理しながら、読み進めていきましょう。