【第5期】2018年7月12日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、村上さんです。

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前期でカズオ・イシグロの『日の名残り』を読み進め、今回でエンディングを迎えました。

石田さんの担当箇所は、ミス・ケントンと再会して丸2日が経ち、スティーブンスがウェイマスの桟橋で夕日を見ながら再会についての想いを巡らせているところでした。

2時間の会話の中で、ミス・ケントンの家族や昔の思い出、ダーリントン卿のことを話しました。

・I must say I thought I began to notice further, more subtle changes which the years had wrought on her. For instance, Miss Kenton appeared, somehow, slower.
・the spark which had once made her such a lively, and at times volatile person seemed now to have gone.

ミス・ケントンは結婚当初は夫を愛していませんでしたが、「分別がある人で助かる」と述べています。そして娘のキャサリンのことや、もうすぐ産まれる孫のことについても話しており、スティーブンスが想像していたよりも結婚生活が危険な状態にあるということはありませんでした。

・What dose the future hold for you back at Darlington Hall?
・Well, whatever awaits me, Mrs Benn, I know I’m not awaited by emptiness.

過去にも似た問いかけの場面があり、そこでのスティーブンスは「ダーリントン卿が目標を成し遂げ、誰もに認められるときにこそ、自分も満足ができる」と答えており、上記の場面は過去の場面との対比になっているのではないか?というのが石田さんの意見でした。

前田君の担当箇所では、ミス・ケントンがダーリントンホールに戻って来てくれると思い込んでいたスティーブンスに、過去にこだわることの愚かさを気づかせ、その後に出会った元執事の老人にスティーブンスが自分の心情を吐露すると、老人は彼に「これからどう生きるかが重要だ」と語り、スティーブンスはジョークの練習をしてファラディを驚かせようと考えます。

ティーブンスはミス・ケントンがダーリントンホールに戻ってくれば、昔の水準に戻ると信じていました。しかし、ここでスティーブンスは「時間は戻せない」と気づき、ショックを受けます。スティーブンスはこのことに気づくのが遅すぎた(今まで目を逸らしていた)のです。

また、ミス・ケントンがもし仮にダーリントンホールへ戻ったとしても、2人は別れてから約25年の月日が経っているため、おそらく昔と同じように働くのは難しいと考えられます。

印象的に感じたのは、スティーブンスがジョークに再び挑戦しようとする最後の場面でした。

・I will begin practicing with renewed effort.

かつて「もう二度としない」と言ったジョークにスティーブンスが取り組もうとしており、新しくなった自分が「未来」を見据えて、前向きに捉えている様子が伺えます。

(果たしてジョークに練習というものが存在するのか、ジョークというものに練習もなにもないのでは?と思ってしまった自分もいますが)

次回から『日の名残り』についての発表が始まります。全体像についての発表は3回生の前期からやっていますが、自分が見落としていたことや、新しいことに気づけて毎回とても勉強になります。しっかり準備して、良い発表が出来るように頑張りたいです。

===ここまで===

ティーブンスは旅の終わりにどのような境地に行きついたのか。意見が分かれるところです。みなさんの場合、全体としては、人生を肯定できたのではないかという意見に傾いていたかな、と。次回からの発表でその辺りについて、再考する人がいるかもしれませんね。