【第6期】2018年10月24日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、武田さんです。

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ジーノの浮気を偶然知ってしまったことによって、イタリア生活のなかで僅かに残っていたリリアの自己満足をも粉々に破壊されてしまう。しかし今の生活から逃げ出したところで、彼女をこころよく迎えてくれる人などいない。感情を殺して生きていこうと決めるリリアであったが、相変わらず気軽に不貞を働き続けるジーノにとうとう我慢できなくなり、彼が外出したある晩、1人で家の外に出ていく。駅へと続く道を歩いていたリリアは、馬車の運転手からの誘いを断るが再び馬車を追いかけた。しかしリリアの叫びもむなしく馬車は行ってしまう。諦めて家に帰った彼女にジーノは襲い掛かり罵声を浴びせたが、彼女も負けずに言い返した。リリアが何もかも知っていたことを知ったジーノは突然笑い出し、部屋を後にする。その晩、リリアは怒りのままにアーマへ手紙を書いた。しかし、その手紙はヘリトン夫人に渡ったため娘には届かず、ついには直接の文通が禁止され、諦めたリリアは病気になり寝たきりとなった。それから後に彼女は息子を出産するが、すぐに死んでしまう。リリアの訃報がヘリトン家に届いた。フィリップの人生の理想、すなわちフィリップの美の国イタリアがジーノによって破壊されてしまった中、ヘリトン夫人、ハリエット、フィリップの3人はリリアの死や赤ん坊のことなど、これからどうするべきか話し合っていた。結果、赤ん坊のことは自分たちには関係のないことだと話がまとまり、アーマとアボット嬢には赤ん坊のことは伏せたままでリリアの死を告げた。数日後、フィリップはアボット嬢と同じ汽車でロンドンへ行く機会があり、アボット嬢の胸の内を聞くこととなる。最初フィリップはいらいらしながら話を聞いていたが、アボット嬢のソーストンに対する思いを知り、フィリップは歓喜する。

“Ah, one ought to marry! Spiridione is wrong; I must persuade him. Not till marriage does one realize the pleasures and the possibilities of life.”

リリアとジーノの夫婦関係が逆転した後でのジーノの発言です。宇高さんが指摘したように、自分の行いがリリアを不幸にしている原因にも関わらず、結婚についての自論を自信満々に述べています。この発言から、ジーノがイタリアの男性として妻のリリアを完全に従わせ、男として一人前になったと感じ、非常に喜んでいることを読み取ることが出来ます。結婚生活の全ての主導権をリリアに握られていた以前の彼とは、かなり異なる発言や態度に驚きました。この2人の会話は、当時のイタリアでの結婚の価値観や一般的な夫婦関係について考えることが出来る重要な場面だと感じました。

また、汽車の中でのフィリップとアボット嬢の会話は、アボット嬢に対するフィリップの気持ちがこれから変わっていくきっかけとなる場面です。人物同士の関係性や気持ちの変化に注目しながら、さらに読み進めていきたいと思います。今回から登場したリリアの息子をめぐる周りの大人たちの行動も、これからの物語の方向性を左右する重要な点だと思うので楽しみです。

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注意すべきは記者の中でのフィリップとアボット嬢の会話の内容ですね。その後の二人の関係の伏線になっているはずです。