【第6期】2018年10月31日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、名本さんです。

===ここから===

今回はp52(前回の巨島さんの続き)からです。

まず話し合いはしませんでしたが前回の最後に、リリアが実はジーノの浮気に気づいているということ知ったジーノが笑いだしたという場面が話題になりました。これについて私は、ジーノはリリアの言うことが全て図星で反論の余地がないからこそ笑うしかなく、また普通なら嘘でも言い訳するのにそれをしないということはリリアのことを心の底からは愛していないのではないかなと思いました。

初めに巨島さんの担当でp58の14行目のa fellow victimについて。これはフィリップとアボット嬢が汽車の中で会話をする場面でのセリフです。意味としては仲間・犠牲者となりますが、ここでいうfellow victimとは「ソーストンでの型にはめられて堅苦しい生き方を強いられている犠牲者」となります。フィリップはアボット嬢のソーストンの人々の生き方に対する考えを聞いて、同じ苦しみに悩み、耐えている仲間だ!と思ったということが想像できます。

つぎの小松さんの担当部分で、前述のフィリップの気持ちに対するアボット嬢の反応が書かれています。

the gulf between herself and Mr. Herriton, which she had always known to be great, now seemed to her immeasurable.

フィリップはアボット嬢のことをもっと知りたいと思い、議論をしたいと言っています。しかしアボット嬢は、自分とフィリップの間にある溝がさらに大きくなったと感じています。ここで大きなすれ違いが起こっています。この部分は結末にも関わってくるのでとても面白い場面だなと感じました。

またアボット嬢が57ページのの14行目で

Lilia ーthat I should dare to say it! ー must have been cowardly. と言います。どういう意味でそういったのかみんなで考えました。子供だったジーノを上手く操ることが出来来ませんでした。もしリリアがジーノを上手く扱うことが出来ていたらもう少し変わっていたかもしれません。リリアが型(ジーノ)から逃れる勇気を出せずに中途半端な立場をとっていたから、または恐怖の存在となっていたジーノときちんと向き合えなかったから、臆病だったとアボット嬢は言ったのではないかと私は思いました。

次は白田さんの担当部分です。ここでは赤ん坊のことは関係ないと言っていたヘリトン夫人がアボット嬢のお節介を阻止するためだけに引き取ろうと言い出す場面です。

この場面に関して私は、自分の意思ではなく自分の利益(この場合、アボット嬢の行動を阻止する)ために命を預かるという大きな選択をしてしまうヘリトン夫人が怖く感じました。それでいて、世間体は気にする様子がさらにそれを引き立てていると思います。あんなにアボット嬢のことを悪く言っていたのに他所には嫌味かと思うほどアボット嬢を持ちあげています。前半部分では1番の常識人だと思っていたヘリトン夫人の人物像が崩れ始めるシーンだと思います。

次の授業では、フィリップは何故イタリアにうんざりしたのか、イタリアに対する気持ちがどう変わったのかということから始まります。あれほどイタリアを賛美していたフィリップがうんざりするというのはよっぽどだと思います。また、それでもイタリアに対する気持ちを消しきれないフィリップの葛藤も面白いと思います。

===ここまで===

フィリップとキャロライン・アボットの関係性が今後どのように描かれていくのか、注目ですね。また、この小説に描かれているイタリアはイギリス人から見たイタリアであり、注意が必要ですね。どの辺に偏見が込められているのかも含めて読んでいきましょう。