【第6期】2018年10月17日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、白田さんです。

===ここから===

二人が初めて出会った場所での生活に満足しているリリアはヘリトン夫人へ手紙を出すが、貸していた象牙細工の箱を返還するようハリエットから返事が来る。イタリアは男性に生まれさえすれば住みよい素晴らしい国であったが、女性は一人歩きすらも許されない慣習があった。しかしイギリスで生まれ育った女性であるリリアは以前の調子で散歩に出かけ、金の腕時計を盗まれてしまうことから、ジーノから抱かれていた「特権階級かつ年上のイギリス人女性」としての畏敬を失った。だがこれはジーノにとって彼女が特別な人間ではないことを実感し、結婚生活における自分の責任について考えるきっかけとなった。その後、町で親友のスピリディオーネと再会したジーノは、カフェで妻リリアについての話をする。気の合うやつかどうかという問いに対してジーノは彼女の人柄を褒めた。それに対して、気の合うやつとはジーノが言った人柄ではなく、相手を理解しどんな考えでも望みでも言える人の事だとスピリディオーネは言い返す。ジーノは秘密結婚したことを話し、リリアが一人で出歩きたがっていて困っていると相談する。スピリディオーネは知恵を絞り、彼女を改宗させたらどうかと提案する。一方これまで自分の結婚に失敗を感じてこなかったリリアだったが、夫の生活ぶりを見てだんだん自信を無くしていく。来世での社会的地位に対する恐怖に苦しまられるリリアは、ローマ・カトリック教会の信徒となる。すべてがイギリスの連中に平手打ちを食らわすようで気持ちが良かったが、その相手はイギリスにはもうほとんどいなかった。ある日、リリアは一人で出歩いてはいけないという問題についてジーノと口論になり、興奮した末、言ってはならないことを口にする。それに対するジーノの反応に恐怖を感じたリリアは、ジーノに完全に服従するようになった。

Italy is such a delightful placed to live in if you happen to be man, There one may enjoy that exquisite luxury of socialism.

渡辺さんが指摘した、イタリアが男に生まれていたらすばらしい国だという説明で、習慣的な平等に基づいた真の社会主義という贅沢を満喫できることや、カフェや劇場で男たちの友情は深まるということが描かれている一方、女たちは教会以外にはあまり出かけないということも描かれています。イタリアと聞くと芸術や文化がとても優れている国だと一般に知られていますがこうした男女の格差もあり、イギリス人の方がまだ平等な社会の中に生きているのではと感じ、また、一人で出歩こうとする妻リリアについて相談したジーノにスピリディオーネがリリアを改宗させてはどうかと提案する場面で、改宗させればリリアは教会以外に出歩こうとしないだろうからそう言ったのだろうかと感じました。

今回は上下関係や男女の格差について詳しく学び、また二人の関係が大きく変わる場面でした。いよいよ、ジーノとリリアの立場が逆転してジーノの浮気を知ったリリアはとうとう我慢できなくなり一人で外へ出かけていくという場面に入っていきますがとても楽しみです。

===ここまで===

リリアの今後を思うと辛い状況になりますね。彼女はいったい何を望んでいるのか、しっかり読んでいきましょう。

【第5期】2018年10月11日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、前田くんです。

===ここから===

今回のゼミでは、「日の名残り」の映画作品を鑑賞しました。

この映画は1993年に公開されたもので、アンソニー・ホプキンスエマ・トンプソンが主演を務めました。

本編を観てみると、原作では出てこなかったシーンや、原作とは全く違う設定で描かれており、驚きました。その描写から、原作からは読み取れなかった当時の流行りや過ごし方などが見えてきて、より作品の世界観に入り込むことが出来ました。

日の名残り」はスティーブンスの語りですすんでいきますが、しばしばスティーブンスは信頼できない語り手とされ、思い出すエピソードも前後して描かれているので、スティーブンスの心境の変化などが捉えにくいことがありますが、映画の中では原作の語りでは分からなかった実際のスティーブンスの様子などがみてとれました。

文学作品を映像化する場合はどうしても全てを映像にすることは出来ないので、一部を改変したり抜粋したりする事がよくありますが、これはこれでまた違った味が出るので、面白いなと感じました。

今回は終盤に差し掛かる前まで視聴しました。これからクライマックスに向けてどのように描かれているのか、楽しみです。

===ここまで===

とても評判になったアイヴォリー監督の映画でした。続きは18日に。みなさんの感想をお聞きしたいです。

【第5期】2018年10月4日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、羽藤さんです。早々と日誌をいただいていたのに、アップが遅くなってすみません。

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先週に引き続き、卒業研究進捗発表でした。

今回は前田くんの『ジェイン・エア』の映像作品から見る解釈、横井さんの『荒涼館』におけるエスタの家政について、石田さんのアガサ・クリスティーがウェストマコット名義で描いた『砂漠瞑想』についてでした。

先週の発表を含め各々、夏休み中に作品をしっかり読み、どのような結論を導きだしたいのか、またそのために大事なところをメモしていました。

結論がまだ定まっていなかったり、論点がずれていってしまったりなど、やはり自分で考えているだけでは筋が通っていないところもあり、みんなからのアドバイスは大切だと感じました。
自分が何について書くのかということをしっかり意識してそのための論文を書くことを忘れないようにしたいです。

===ここまで===

いろいろ突っ込みましたが、いい卒業研究をしていただきたい! そう思っています。

【第6期】2018年10月10日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、巨島さんです。

===ここから===

アボット嬢からの電報が届くが、ヘリトン夫人の納得する答えではなく、直感でリリアの婚約者がイタリアの貴族ではないと悟るや否や息子のフィリップをリリアのいるモンテリアーノに向かわせた。フィリップはモンテリアーノに着くと、アボット嬢に会い、すぐさまリリアの婚約者についての質問を浴びせる。アボット嬢は、なんとか婚約者の身分は誤魔化しつつ、アボット嬢自身も彼を気に入っていると答えた。2人が馬車で会話を続けるもあっと言う間に屋敷に着き、フィリップは尋常ではない歓迎を受け、晴れ晴れとした表情のリリアから婚約相手であるジーノを紹介される。ジーノの第一印象から好ましい印象を抱かなかったフィリップは、その後もジーノの言動に嫌悪感を抱いた。リリア、ジーノ、アボット嬢と夕食を共にした後、フィリップはリリアと2人だけで話がしたいと部屋を移し、彼女にジーノはリリアに相応しくない相手だと説得しようとするが、リリアは断固として反対し口論となる。最終的にジーノを部屋へ招き、2人きりになった後、フィリップはジーノにリリアと別れてくれたら報酬を出すともちかける。フィリップから告げられたことに驚いたジーノだが、もう既にリリアと結婚していることを伝える。その際、ジーノから乱暴を受け怒ったフィリップは、ここにはいられないと泣くアボット嬢を連れてソーストンへ帰っていった。リリアとジーノの結婚生活は二人が初めて出会った場所で始まった。ジーノは自身の家族も一緒に暮らすことを提案したが、拒絶を示したリリアを見て、結果彼の家族と暮らすことはなかった。

“‘Welcome!’ she cried. ‘Welcome to Monteriano!’”
“‘You told me to come here,’she continued,’and I don’t forget it. Let me introduce Signor Carella!’”
“What an angel...have had a mauvais quart d’heure.

フィリップが屋敷に着いた場面でのリリアの発言です。フィリップとアボット嬢が内心どんな気持ちでいるのかも知らずに、興奮した様子でフィリップを屋敷に迎えいれています。この場面から日野くんも言っていたように、リリアが様々な点で無神経であり、鈍感であるということが分かりました。また、リリアはこの屋敷の主人ではないにも関わらず、’Welcome !’といの一番に挨拶をし、自分が主人であるかのような振る舞いをしています。ヘリトン家に来てから12年間ずっと教育され苦しめられてきたからこそ、リリアは少しここで見栄を張ってみたかったというのも1つの可能性ではないかと感じました。

今回は授業の見学者の人が沢山来ていたので少々緊張しました。フィリップの制止を跳ね除け、大きな選択を成したリリアとジーノですが、次回からはいよいよ2人の結婚生活が本格的に始まります。気を引き締めて読み進めていこうと思います。

===ここまで===

精一杯のリリアの見栄が痛々しく、鈍感なままでもいられず…。リリアとジーノの結婚生活が今後どうなっていくのか、しっかり読んでいきましょう。

【第6期】2018年10月3日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、樫本さんです。

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今回から『天使も踏むを恐れるところ』の内容に入っていきました。第1章から第2章の途中まで読み進めました。

まず、武田さんが担当のチャリング・クロス駅での場面です。イタリア旅行に出発するリリアとアボット嬢を見送るため、彼女たちの家族が駅に集まっています。“’Quite an ovation,’ she cried, sprawling out of her first-class carriage. 裕福な家のリリアが身分にそぐわない行動を取っていることがわかります。ヘリトン夫人は、ヨークシャーからはるばるやって来たシオボールド夫人の付き添いキングクロフト氏に“And I think it simply noble of you to have brought Mrs Theobald all the way here on such a day as this.” というねぎらいの言葉をかけていますが、”Then, rather hastily, she shook hands, and left him to take Mrs Theobald all the way back.” からわかるように、雑な握手をしていることから本心ではないことが読み取れます。彼のような付き添いのことをシャペロンというそうです。また、フィリップがイタリアに対して少し偏ったイタリア観を持っていることがわかります。

次に、名本さんが担当のリリアの手紙が送られてくる場面です。” ‘Look here, read it, mother, said Harriet, I can’t make head or tail.’ Mrs Herriton took the letter indulgently. ‘What is the difficulty?’ She said after a long pause. ‘What is it that puzzle you in this letter?’ ‘The meaning’ faltered Harriet.” 旅先で婚約したという知らせに、戸惑いを隠せないハリエットと、ただでさえ世間体がよくないのに連絡する順番が違うことへの憤りを隠しきれないヘリトン夫人の様子が描かれています。文学作品や何十年も前の旅行記”Central Italy by Baedeker” からもモンテリアーノを調べようとするなど、的外れなドタバタ具合であったことがわかります。

最後に、浜崎さんが担当のフィリップがモンテリアーノへ向かう場面です。” If Lilia marries him she insults the memory of Charles, she insults Irma, she insults us.” ヘリトン夫人は、リリアの結婚はヘリトン家への侮辱だと考え結婚に反対しています。フィリップは”He had known Miss Abbot for years, and had never had much opinion about her one way or the other.” というように、アボット嬢に対して魅力を感じておらず、平凡な女性だと思っていることがわかります。

いよいよ今回からテキストに入っていきましたが、序盤からリリアの婚約に憤りを隠せないヘリトン夫人の行動など、くすっとしてしまう場面が多々ありました。これから物語を読み進めていくのが楽しみです。

===ここまで===

イギリスとイタリア、リリアとアボット嬢、フィリップとジーノなど等、対比が面白い作品ですね。お上品ぶっているのに、ドタバタして、どうもエレガントになれないヘリトン夫人とハリエットの対比も面白い。じっくり読んでいきましょう。

【第5期】2018年9月27日のゼミ日誌

今回の日誌当番は、石田さんです。

本来なら、日誌当番は日誌用のメモを取りつつゼミに参加するのだと思います。が、私が日誌当番をお願いするのをすっかり忘れていたので、石田さんにはメモなしで取り急ぎ書いていただいた次第でした。以後、気を付けます。すみません…。

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27日の卒業研究進捗状況発表は羽藤さん、矢原さん、松浦さん、村上さんで、タイトルは以下の通りでした。

高慢と偏見』におけるスノビズム(羽藤)
クリスマス・キャロル』と『鐘の音』から読み解く"Hungry Forties"(矢原)
ジェイン・エア』からみる女性の自己実現(松浦)
ジェイン・エア』における女性の抵抗・反抗について(村上)

皆の発表と自分の構想とを照らし合わせて聞いていて、言葉の定義付けをしっかりしないといけないと思いました。またなぜそのワードを持ってきたのか、とか、なぜその部分を取り上げたのか、とか根本的なところもしっかり構成したいと思います。

本文の構成も、序論に持っていくべきところを本論に持ってきていないか、とか、一貫性はあるか、など読んでいて言いたいことが伝わる文にしなければ、と思いました。

===ここまで===

大学生活も大詰め、いい卒業研究に仕上がりますように。

【第6期】2018年9月26日のゼミ日誌

後期初回の日誌当番は、宇佐美さんです。

===ここから===

後期最初のゼミということで、少し楽しみにしていました。今回は、夏休みに読んだ『天使も踏むを恐れるところ』と、自分で選んだ本の感想を発表しました。

まず、『天使も踏むを恐れるところ』では、「読んでいて急な展開になることが多かった」という感想を何人か言っていて、私も確かにそうだなと共感しました。私がまず驚いたのが、リリアとジーノが既に結婚していた場面です。手紙では婚約したということが書かれていて、私はそれだけでも驚きました。しかもホテルで会った人と、ということに疑問まで抱いてしまいました。普通では考えられない状況で、ジーノという人に騙されていないか、本当に大丈夫なのかリリアのことが心配になりました。誰にも相談せずに結婚して、身内まで騙していたことには腹が立つくらい感情移入しました。
次に驚いた場面が、リリアが死んでしまったところです。子どもがいたが、別れを告げ長期で海外へ行き、自分なりに楽しんでいるところが好きでした。これからリリアはどうなるのだろうと楽しみに読み進めていくと、ジーノとの結婚を経てイタリアでの生活や出産を経験し、挙句の果てに死んでしまうという、私にとって気持ちのやり場がない場面でした。
最後に衝撃を受けたのが、ジーノから子どもを奪い返す場面で、やっと取り戻して帰ろうというところでその子どもが死んでしまったところです。その前で、ハリエットが赤ちゃんを盗んできたという発言、その行動にも驚きました。自分の子どもを盗まれて、それに気づいた時のジーノの気持ちはどうなのだろうと考えたら悲しくなりました。それに、最後の最後でアボット嬢がジーノのことを好きになってしまう事実には、一番驚かされました。
このE・M・フォースターの『天使も踏むを恐れるところ』には、最初から最後まで驚かされました。振り返ってみると、話の展開が急で気持ちが疲れてしまう小説だったなと思います。でも、授業中に矢次先生が言われていたように、この本で終わるのではなく別の作品も読んでみようと思います。

自分で選んで読んだ本の感想では、私が知らない本ばかりで特に面白そうだなと思ったのが、武田さんの『ハリネズミの願い』です。主人公が動物の話は読んだことがなくて、なんだかかわいいお話なのかなと思いました。私は本に対して感情移入しがちなので、みんなが紹介してくれた本どれも今回みたいに様々な感情が湧くと思います。それと同時に、考え方が広がると思うので少しでも興味を持った本は、どんどん読みたいと思います。後期のゼミも頑張りたいです。よろしくお願いします。

===ここまで===

久しぶりのような、そうでもないような不思議な感じの回でした。みなさんが夏休みに読んだ本のご感想、面白かったです。フォースター作品、図書館にもありますので、ぜひ手に取ってください。